軽井沢町の絶滅危惧種83種(植物のみ)の生育環境リスト                  戻る

 ―――『長野県版レッドデータブック 維管束植物編』から―――
 最近、町の姿が大きく変わろうとしています。「かつて身の回りにいた普通の生き物が現在では絶滅に
瀕している。」昨今よく耳にする、生き物をめぐる現状を語る言葉です。私たちの町は、かつてたくさんの
野の花が咲き乱れ、蝶が舞い、鳥が鳴き、動物達が愛らしい姿を見せてくれる町でした。冷涼な気候と、
自然豊かな雰囲気や、さまざまな景色を楽しみに、都会からいろいろな人たちが夏をすごしに来ていま
した。
 今、私たちはどんな植物を失いかけているのか?疑問に思って『長野県版レッドデータブック 維管束
植物編』や、『軽井沢の植物』(原、佐藤、黒沢 共著)で、軽井沢町の絶滅危惧種83種をその生育環境
別に分類してみました。すると絶滅危惧種の約半数が、草原・湿地に生息していたことがわかりました。

 A;日当たりのよい草地や湿原 46種 (49%)
 B;池沼、河川、水路         9種 (10%)
 C;山地の林床           30種 (32%)
 D;高山帯              7種 (8%)
 E;その他(寄生植物など)      1種 (1%) (注・重複分類しているので、合計は83種以上になる。)

 草原と池沼、河川、水路を含む広義の湿地の合計が約60%にもなり、予想以上に草原・湿地の破壊
が絶滅危惧種を増やしていることがわかります。これは、私たちが軽井沢町の自然環境を保全したいと
思ったら、まず第一に草原・湿地環境を保全することが大切だということです。

―――――――――――――――絶滅危惧カテゴリー別一覧―――――――――――――――

凡例 A;草原・湿地、 B;池沼・河川・水路、 C;山地の林床、 D;高山帯、 E;その他

1)絶滅;かつて軽井沢町にあったが、長野県では絶滅したとみなされている種 6種
B オオイチョウバイカモ  (環境省 TB)      河川(山ノ内町と軽井沢町のみにあった)
A ハナハタザオ       (環境省 TA)       山野
A コケリンドウ        (環境省 カテゴリー)  日当たりのよい草地
A マメダオシ         (環境省 カテゴリー)  日当たりのよい原野
A オオミズトンボ      (環境省 TB)      日当たりのよい湿原
A ムカゴソウ         (環境省 カテゴリー)  やや湿った草地

2)絶滅危惧TA類;ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種 11種
C ツルガシワ(カモメヅル) (環境省 TA)     山地の木陰
C ヤマタバコ         (環境省 TA)     山地に稀に生える
D ミスズラン          (環境省 TA)     亜高山帯の針葉樹林の林床
C アオキラン         (環境省 TA)     落葉樹林の林床
C ベニバナヤマシャクヤク (環境省 TB)     腐葉土の発達した落葉樹林
A ヒナノキンチャク      (環境省 TB)     日当たりのよう湿地や湿潤地
A ムラサキ          (環境省 TB)     山地の草原
B ヒンジモ           (環境省 TB)     湧水があり水がきれいな水温の低い池沼
A ヒメアマナ         (環境省 TB)     山地帯の湿った草原
C オオハクウンラン     (環境省 TB)      山地帯の林床
C エゾヤマアザミ      (環境省 カテゴリー)  山地帯の林縁の湿所

3)絶滅危惧TB類;TAほどではないが、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種 23種
B オオアカウキクサ    (環境省 U)       湖沼や水田
A オキナグサ        (環境省 U)       山野、日当たりのよい草地
C ヤマブキソウ       (環境省 カテゴリー)  山林の林内、広葉樹林
A エンビセンノウ      (環境省 TB)      山地の湿地、草地
A エゾオオヤマハコベ   (環境省 カテゴリー)  少し湿った湿原
A ムラサキベンケイソウ  (環境省 U)       草原や崖
C クロビイタヤ        (環境省 B)        山地の湿った林内
D タカネセンブリ      (環境省 カテゴリー)   高山帯の草地
C ルリソウ          (環境省 カテゴリー)   林内、山林
A ムシャリンドウ      (環境省 TB)      日当たりのよい草原
A ヤマルリトラノオ     (環境省 カテゴリー)  山地の草原、日本海側
E キヨスミウツボ      (環境省 カテゴリー)  カシ、アジサイ類の根に寄生
D キバナウツギ       (環境省 カテゴリー)  深い山中
B ホソバヒルムシロ    (環境省 U)       湖沼、河川、水路
C ハタベスゲ        (環境省 カテゴリー)  山地の森林内
AB アサマスゲ       (環境省 カテゴリー)  河畔の草地
A ツルカミカワスゲ     (環境省 カテゴリー)  山地の草原
B ヌマガヤツリ       (環境省 カテゴリー)  池沼、川岸などの水湿地
A ヒメマツカサススキ   (環境省 TB)      日当たりのよい湿地
A コホタルイ         (環境省 カテゴリー)  湿地
AC ヒロハノハネガヤ   (環境省 カテゴリー)  山地帯の林内や草地
B ナガエミクリ       (環境省 準)       池沼、河川、水路
C カモメラン         (環境省 TB)      湿り気の多い林内

4)絶滅危惧U類;絶滅の危機が増大している種 22種
C センウズモドキ     (環境省 U)       落葉広葉樹の林縁や林内
C ジゾウカンバ       (環境省 カテゴリー)  山地の日当たりのよい崖や岩尾根
C ヤマシャクヤク      (環境省 U)       山地
A サクラソウ        (環境省 U)       山麓や川岸の湿気の多い原野
A ハナネコノメ       (環境省 カテゴリー)  谷沿いの林内の湿地
D カラフトイバラ      (環境省 カテゴリー)  寒冷地や高山
AD ミヤマニンジン     (環境省 カテゴリー)  深山、岩石の多い草地
A ムラサキセンブリ    (環境省 カテゴリー)  日当たりのよい草地
A フナバラソウ       (環境省 カテゴリー)  高原の草地
C マネキグサ       (環境省 U)       山地林内や丘陵の草地
AB ハナヒョウタンボク  (環境省 TB)    高冷地の湿地周辺など他の植物にとって生育しにくい環境
A タカサゴソウ       (環境省 U)       丘陵地や山麓の日当たりのよい草地や道端
A ノカラマツ        (環境省 U)       ふつうの日当たりのよい草地
A ヒメヒゴタイ        (環境省 カテゴリー)  山地帯の草原や林縁
C ヒトツバテンナンショウ (環境省 カテゴリー)  暗い林縁や林床
AC ヒナスゲ        (環境省 カテゴリー)  森林内あるいは草地
A シラカワスゲ(ヌマクロボスゲ)(環境省 カテゴリー) 山地の湿原(くご・くぐ)
A コシンジュガヤ     (環境省 カテゴリー)  日当たりのよい湿地
D ミヤマヒタバラン    (環境省 カテゴリー)  亜高山帯の針葉樹林の林床
A ミズチドリ        (環境省 カテゴリー)  山地から亜高山帯の日当たりのよい湿原や草原
AD タカネサギソウ    (環境省 カテゴリー)  亜高山帯から高山帯の草原
A トキソウ         (環境省 カテゴリー)  日当たりのよい湿地

5)準絶滅危惧 21種
A アサマフウロ       (環境省 TB)     高原の湿った草地
C ホソバノツルリンドウ  (環境省 TB)     山地
AC カイジンドウ      (環境省 TB)     山地帯の林縁や草地
A コウリンカ        (環境省 U)      日当たりのよい山地の草原
A オオニガナ        (環境省 U)      湿地や湿性林内
C ヤエガワカンバ     (環境省 U)      山地帯の向陽地
C オオヤマカタバミ    (環境省 U)      山地から亜高山帯の林内
A スズサイコ        (環境省 U)      日当たりのよい草地
C ツルカメバソウ     (環境省 U)      山地
AC キセワタ        (環境省 U)      山地帯の林縁や草地
AC ノダイオウ       (環境省 U)      山地帯の湿地や草地
AC モメンヅル       (環境省 カテゴリー) 山地帯の草地
A レンリソウ        (環境省 カテゴリー) 湿った草地
A イヌハギ         (環境省 U)       日当たりのよい砂地
B フサモ          (環境省 カテゴリー) ため池、水路
C ミヤマクマヤナギ    (環境省 カテゴリー) 山岳上部の谷筋や林内の湿潤地
C グンバイツル      (環境省 U)       山地帯の林縁や砂礫地
A キキョウ         (環境省 U)       山地帯の日当たりのよい草地
C オニヒョウタンボク   (環境省 U)       山地
C ギンラン         (環境省 カテゴリー) 山地帯の林下
A ミズトンボ        (環境省 U)       日当たりのよい湿地


                                                      計83種